負けんとき/玉岡かおる
- 作者: 玉岡かおる
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/11
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
- 作者: 玉岡かおる
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/11
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
正式なタイトルは、『負けんとき ヴォーリズ満喜子の種まく日々』である。
興味を抱いている人物の一人に、建築家にして実業家、キリスト教徒伝道者たるウィリアム・メレル・ヴォーリズがいる。関心を抱いている理由は幾つかあるが、まずは美しい西洋館をいくつも建てたということ、そして播磨小野藩最後の大名の娘にして、子爵令嬢たる一柳満喜子と結婚したことがある。
この『負けんとき』は一柳満喜子の生涯を題材にしたフィクションで、「華族のお姫様と、外国人との婚姻は可能だったのか。周囲に反対されなかったのか」とかねてから抱いていたクエスチョンに答えてくれる一冊だった。
答えを言えば、反対された。だから一柳満喜子は華族の籍を捨て、平民として結婚したのだ。彼女は華族の姫君としては育ったが、ろくでもない父を中心とした封建的で息苦しい家に苦しめられていた。環境から逃れるかのように、キリスト教に傾倒し、アメリカ留学を果たし、そして生涯を共にするパートナーとして、ウィリアム・メレル・ヴォーリズに出会った。
男性中心の世に生まれ、好奇や偏見の目を乗り越えて、メレルと結婚したのちも、太平洋戦争が始まってしまい、さらにつらい環境に置かれるというストーリーなので、あまり明るい話ではない。飼い犬が苛められるくだりでは怒りを覚えた。登場人物達の精神的な強さが救いだ。
1941年にメレルは、日本に帰化し、「一柳米来留(ひとつやなぎ めれる)」と名乗るようになったのだが、漢字の意味は『アメリカ「米」より「来」たりして、日本に「留」まる』という洒落らしい。微笑ましい由来である。
一柳満喜子のWikipediaはこちら
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E6%9F%B3%E6%BA%80%E5%96%9C%E5%AD%90