鐘の音は恋のはじまり/ジル・バーネット
鐘の音は恋のはじまり (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
- 作者: ジル・バーネット,寺尾まち子
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2011/11/21
- メディア: 文庫
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これは良きラブコメディ。ドジっ子の若い娘……ただし魔女……と、クールな堅物の貴族男性というありがちなキャラクター設定を使いながら、六百ページを超える長さを感じさせぬ、いとも甘美で楽しい作品に仕上がっている。
十九世紀スコットランド。ジョイは、魔女でありながら、下手な魔法しか使うことができなかった。ビーズルというオコジョの使い魔がいるが、ほとんど役に立たないのでペットのようなものである(ビーズルがすることは、マフラーのように首の周りに巻きつく、人の口や唇を前足でもてあそぶ、人間の頭の上で寝る、人間の背中にへばりついて、その髪の毛を引っこ抜くことぐらい)。
ジョイはある日、移動の魔法を使おうとしたが、ビーズルとともに飛んだのは、イングランドの美男公爵アレクの胸の中。花嫁候補に逃げられたばかりのアレクは、成り行きでジョイとの結婚を決める。アレクに惚れたジョイは結婚を喜ぶが、彼に自分が魔女だと打ち明けても、なかなか信じてもらえず、騒動が広がっていく。
ジョイが魔法を使えば、真冬に薔薇の花が咲き、屋敷中の時計が狂い、彫像は踊り出し、大騒動が起こる。彼女は自分が魔女、アレクが人間という障害を乗り越えて一途な思いを貫こうとし、厳格で秩序を好むアレクも、ジョイのおかげで己が変わっていくのを感じるのだ。
初めて読む作家だが、いい作家。長編の邦訳はこれが初のことだが、続々と訳されることを期待する。