FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

アリス・クリードの失踪/J・ブレイクソン監督

アリス・クリードの失踪 [DVD]

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 ベッドや防音材などを買い込み、人家のないアパートへと運び込むところから、映画は幕を開ける。引っ越しか、などと考えていると、画面には手錠や猿轡など、やけに不穏当なものが映し出される。やがて、この二人の男に、一人の女性が攫われてくる。会話から、女性の親が裕福だと分かる。そう、この女性、アリス・クリードは身代金目当てに誘拐されたのだ。二人の男は淡々と、あたかもビジネスを進めるように、アリスの父親から金を引き出そうとする。
 プロの犯罪者(もしかしてギャング?)の計画が、いかにして崩れていくの描いた映画かな………と思っていたら、実のところ、中途から様相が変わる。
アリスと犯人のどちらかが共犯かもしれない、と想像していたが、それは外れていた。男の一人は、アリスの恋人ダニーだったが、滅多に話さず、顔を覆面で隠していたためにアリスは途中まで気付かなかったのだ。そして、アリスは知らなかったが、ダニーともう一人の男ヴィックは、同性愛の恋人同士だった。こうして物語は、愛憎と、そして金銭欲が絡んだ極めて生臭い方向へと向かっていく」。
最後にはアリス一人が生き残り、大金を手にするのだが、彼女は最初からそれを狙っていたわけではない。なんとか生き延びようとあがいた結果、偶然そうなっただけ。ヒロインが最後に高笑いする悪女タイプではないのが、かえっていい
 ネタバレ防止ゆえ、白い部分が多くて申し訳ない。
 途中で、使われるある小道具の出し入れ(映画を見てもらえば分かるが、文字通り「出し入れ」だ)が醸し出す緊迫感が良かった。
 期待値をやや高く設定し過ぎたためか、そこには到達はしなかったものの、限定された舞台、限定された登場人物で作られる秀逸なミステリ映画だった。