FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

結婚は復讐のために/ニコラ・コーニック

結婚は復讐のために (ハーレクイン・ヒストリカル・エクストラ)

結婚は復讐のために (ハーレクイン・ヒストリカル・エクストラ)

 初めて読む作家だが、なかなかの当たりだった。
 十九世紀ロンドン。イザベラは、父親の浪費による貧困から家族を救うため、カシリスというヨーロッパの公国の公妃となった。結婚式を目前に控えていた身で、最愛の男性マーカスを捨てて。
 イザベラの夫であるカシリス公が残したものは、醜聞と借金のみだった。イザベラは借金から逃れるため、策を弄して囚人と結婚する成り行きとなった。しかし、自分が結婚することになった囚人を見て、ぎょっとした。その囚人とはマーカス、イザベラが心から愛したただ一人の男性だったのだから。
 イザベラは知らなかった。マーカスがある目的のため、わざと囚人として牢獄に潜り込んでいたのだ。そしてマーカスは、かつて自分を捨てたイザベラに復讐するため、結婚を承諾した。しかしマーカスのイザベラに対する感情は、愛と憎悪の間をひたすらに揺れ動くこととなる。
 ページ数も多く、ヒーローとヒロインのそれだけではなく、幾人もの登場人物の愛憎が絡み合い、実に読み応えのある作品となっている。ヒーローとその友人はある悪党を追っているのだが、この悪党にも、なかなか味がある。ロマンス小説に出てくる陰謀家は、「恐ろしい、恐ろしい」と言われているにも関わらず、結局大したことのない人間が多いのだが、この悪党エドワードが辿った運命は物悲しく、皮肉なものがある。
 いい作家をまた一人見つけた。他の著作を読むのが楽しみだ。