FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

めぐりゆくケルトの瞳/エリン・クイン

めぐりゆくケルトの瞳 (ヴィレッジブックス)

めぐりゆくケルトの瞳 (ヴィレッジブックス)

 妖しい力を持つ架空の本、『ブック・オブ・フェンノア』に関わるシリーズ一作目。
 ロマンス小説としては、珍しいほど凝った設定の物語である。ただこの主人公達の置かれたシチュエーションの不思議さやその解決に大きな重点が置かれているあまり、ロマンス小説としては主人公達の恋愛描写がやや少なめになっている。
 アリゾナ州のアンティークショップで働く若い女性ダニー。彼女は五歳で母に捨てられるという哀しい体験をしていた。ある日、謎めいた男が夢に現れ、若い母や幼い自分やその双子の弟の姿、そしてもう大人になった自分が死体となっている様子を見せられる。
 翌朝、自分を訪ねてきた男を見て、ダニーはぎょっとした。夢に出てきた男だ。男はショーンと名乗り、アイルランドのある小島に、ダニーの親戚が見つかったから、迎えに来たのだの説明した。
 だが、自分を捨てた失踪した母親のことなどをネットで調べているうちに、ダニーはさらに驚くこととなった。あのショーンという男が、すでに死んだはずの人間だったのだ。なにせ死亡記事がネットに出ている。だったら、あの男は一体なにものなのか。
 ショーンから一族のペンダントを受け取った瞬間、二人は二十年前にタイムトリップする。そこはダニーとショーンの故郷であるアイルランドの小島で、なぜか二人は夫婦という扱いを周囲から受けていた。
 若い父母や、幼い自分、そして双子の弟とも顔を合わせ、動揺するダニー。ダニーとショーンは力を合わせ、ダニーの母の失踪を含めた、この異様な状況の謎を解こうとする。
 軽いネタバレをすると、ある理由で離ればなれになっていたダニーとショーンが再会するところでちょうどお話が終わってしまうのだが、そこから恋愛が発展していく様子ももっと読みたかった。
 パラノーマル・ロマンスの中でも、かなり異色の設定の作品。