FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

Love With the Perfect Scoundrel/Sophia Nash

Love with the Perfect Scoundrel (Widows Club)

Love with the Perfect Scoundrel (Widows Club)

 『海と空の宿る瞳』、゛The Kiss゛に続く「未亡人」シリーズ第三作。『海と空の宿る瞳』ではリュックと婚約してふられ、゛The Kiss゛ではクインと婚約してふられたグレースがヒロインである。二人ともひどい。なのに、リュックも、クインも、この作品ではグレースの友人面をしている。やっぱりひどい。
 ソフィア・ナッシュはこれまで読んだ作品の中では、自然豊かなコーンウォールを舞台にすることが多かったが、今回はこの地を離れ、ヨークシャーとロンドンが舞台となっている。
 若くして伯爵未亡人となり、そののち二度の婚約も無残な形に終わった(どちらも婚約者も、グレースの親しい女友達と結婚してしまった)グレース。コーンウォールを離れ、旅に出た彼女は、ヨークシャーの雪嵐の中、大破した馬車の中から一人の男性を救い出す。
 男はマイケル・ライナーと名乗った。鍛冶屋兼農夫だという。二人は怪我のため、嵐を避けるため、同じ宿に泊まり、心を通わせ合う。一見したところ、グレースとマイケルの間には、身分の差が立ちふさがっている……ように見えた。
 だが、問題は実はそこにはなかった。マイケルは実は長い間、行方不明になっているウォレス伯爵その人だった。彼は殺人を犯した疑いをかけられ、被害者の兄から執拗な追跡を受けていたのだ。
 グレースはマイケルのすべての事情を知っても愛し、マイケルの敵と戦う決意をする。
 『海と空の宿る瞳』に負けないほどの傑作である。ソフィア・ナッシュと言えばコーンウォールという印象が強かったが、そこから離れても十分に面白い。
 クリスマス前後を舞台にしているだけにいっそうロマンティックな一作。

海と空の宿る瞳 (ラズベリーブックス)

海と空の宿る瞳 (ラズベリーブックス)

The Kiss (Widows Club)

The Kiss (Widows Club)