FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

愛といつわりの誓い/トレイシー・アン・ウォレン

愛といつわりの誓い (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

愛といつわりの誓い (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

 『あやまちは愛』に続く「トラップ三部作」のシリーズ第二作だが、間違えて二巻である本書から手に取ってしまった。ヒロインは第一作目のヒロインの双子の姉で、『あやまちは愛』での出来事が絡んでくるが、この作品から読み始めても問題はない。
 ヒロインのジーネットは『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラ型の美女で、とにかく勝ち気でわがままである。ヒロインがこういった性格の場合、バランスを取るように相手の男性が大人しくて物静か、であることは滅多になく、この作品のヒーロー、ダラーも個性の強い性格で、二人が最後の最後まで延々と意地の張り合いを演じることとなる。
 十九世紀初め。イングランドの伯爵家令嬢ジーネットは、双子の妹を身代りに、自分が花嫁となるはずだった結婚式から逃げ出し、別の男と駆け落ちした。しかしその男には捨てられ、怒り狂った両親にどうしようもない田舎(と当人には思われた)であるアイルランドの親戚に預けられる羽目となった。
 退屈な日々。だがジーネットは建築家ダラーと知り合い、不本意にも相手に惹かれ、そしておかしな成り行きで結婚することとなる。
 ダラーを才能あるが、貧しい庶民の建築家だと思い込んでいたジーネットは知らなかった。ダラーがアイルランドの名門マルホランド家の伯爵で、一度は落ちぶれた実家を、己の才能だけを頼りに再興させた、富も爵位もある貴族であることに。
 ダラーが自分の身分を告白できないまま、二人の波乱だらけの結婚生活は幕を開ける。
 ヒーローはヒロインに振り回され、ヒロインはヒーローに振り回される、そんなおかしくて面白いヒストリカルロマンス。初めて読む作家だが、とても素敵だった。のちに改心するとはいえ、わがまま放題で強気なヒロインに耐えられるなら、ぜひ。

あやまちは愛 (二見文庫 ウ 6-1 ザ・ミステリ・コレクション)

あやまちは愛 (二見文庫 ウ 6-1 ザ・ミステリ・コレクション)