FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ネイムレス 無名恐怖/ジャウマ・バラゲロ監督

ネイムレス 無名恐怖 [DVD]

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 パコ・プラサ監督の秀作『ダーク・チャイルド 血塗られた系譜』と同じく、ラムジー・キャンベルが原作を描いている。この原作は、『無名恐怖』として邦訳されているのだが、残念ながら読んだことがない。『ダーク・チャイルド 血塗られた系譜』と同じく、真紅の鮮血と闇の漆黒に満ち満ちた、救いのない作品で、なおかつ地味な作風だが、実に面白かった。
 出版社に勤めるクラウディアには、つらい過去があった。かつて幼い娘を、カルト教団と思しきものたちに誘拐されたのだ。遺体は見つかったのだが、あまりにも惨たらしいもので、「おそらく娘だろう」ということしか分からなかった。クラウディアはそののち夫と離婚した。
 ある日、クラウディアは愕然とする。ひどく怯えている様子の少女の、助けを求める声が受話器の向こうから聞こえてくる。紛れもなく娘の声だ。
 娘が生きているかもしれない可能性にすがり、クラウディアは必死で調査を始める。娘の件にも関わり、今は警察を退職している男性、マセラが力を貸してくれた。
 かつて娘を拉致したと思しきカルト集団「ネイムレス」とは一体なんなのか。そして本当に娘は生きているのか。
 ホラー映画の題材として、カルト教団が出てくるものは、基本的には嫌いなのだが、これは例外的に面白かった。
 冷たく美しい印象の映像に、淡々と放たれる衝撃的なラスト、最後の最後までどうなるか気の抜けない、なかなかの秀作だった。
 スペインのホラー映画ってもっと面白いものがたくさんあるかも。まめに探そう。

無名恐怖 (BOOK PLUS)

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