FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

湖のほとりで/アンドレア・モライヨーリ監督

湖のほとりで [DVD]

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 大傑作だとか、とても面白いとか言えないのだけれど、ちょっといいミステリ映画。『しみじみ読むイギリス・アイルランド文学』や『しみじみ読むアメリカ文学』というタイトルの書籍を本屋で見かけたことがあるけれど、これは『しみじみと見るイタリア映画(ミステリ)』といったところか。
 北イタリアの小さな町。平和なはずのこの村で、一人の幼女が消え、また別の少女の亡骸が湖で見つかった。この導入部からして実にうまい。村にやってきたばかりの刑事は、家庭に大きな問題を抱えながら、亡き少女の周辺を探る。
 この映画では、登場人物誰もが痛みを抱えている。それは死んだ少女はむろんのこと、前述の通り刑事さえもが例外ではない。静謐で、小暗い詩情の漂う、決して明るいとは言いかねる作品なのだが、一人の幼女の失踪に端を発する導入部のうまさと、湖畔で見つかった少女の死体を含め、映し出される風景の美しさはちょっとない。
 原作はカリン・フォッスム『見知らぬ男の視線』。今まで知らなかったが、検索して調べてみたところ、このカリン・フォッスムはノルウェーの売れっ子ミステリ作家で、原作では当然ながらノルウェーが舞台だったようだ。
 ちなみに監督アンドレア・モライヨーリは、これが長編デビュー作とのこと。作風のあまりの渋さに、すでにベテランの監督の小品かと思っていた。

しみじみ読むイギリス・アイルランド文学 (現代文学短編作品集)

しみじみ読むイギリス・アイルランド文学 (現代文学短編作品集)

しみじみ読むアメリカ文学 (現代文学短編作品集)

しみじみ読むアメリカ文学 (現代文学短編作品集)

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