FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

偽れない愛/リサ・クレイパス

偽れない愛(ライムブックス)

偽れない愛(ライムブックス)

 リサ・クレイパスのデビュー作に現代風の改稿を加えた作品。翻訳されている彼女の作品としては、初のアメリカを舞台にしたヒストリカルロマンスだ。
現在のクレイパス作品ほどゴージャスな印象は受けない。ぎこちなさと、そして初々しさが感じられる。
 独立戦争後、南北戦争前の十九世紀初頭のニューオーリンズ。自分を虐待する義父に、嫌いな男性サジェスとの結婚を強制させられたリゼットは、家からも結婚からも逃げ出すために家出。その先で行き倒れになりかけていたところを、偶然地元の大農場主であるヴァルラン家の当主マックスに救われる。惹かれ合うマックスとリゼット。しかしマックスはサジェスとひとかたならぬ因縁のある相手であり、またかつて妻コリーヌを殺害したという疑いも周囲から、かけられていた。
 かつてのニューオーリンズの上流階級の倦怠感あふれる雰囲気がいい。文化背景が違うから当然なのだが、イギリスのヒストリカルロマンスとはまた違った趣がある。当時の政治的な話題もそこそこ絡んでくるので、訳者平林祥が、冒頭に簡単な米国史及びニューオーリンズ史をつけたのはナイス判断である。
 アメリカを舞台にしたヒストリカルロマンスでも、この時代を舞台にしたものをあまり読んだことがなかったが、馴染みやすかった。