FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

エアーズ家の没落/サラ・ウォーターズ

エアーズ家の没落上 (創元推理文庫)

エアーズ家の没落上 (創元推理文庫)

 待ちに待ったゴシックロマン。
 三橋暁は解説で様々なゴシックロマンを挙げているが、当方がもっとも近いと感じたのは、ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』だった。あれも霊の仕業なのか、人がなした所業なのか、判然としないところがある。
 二百年栄華を誇ったハンドレッズ領主館。幼い少年の頃からこの邸宅に憧れを抱く中年男性医師ファラデーの眼前で、館に住まうエアーズ家のあるものは狂い、あるものは生命を失い、滅んでいく。しかし、それらは一体館に憑いた人ならぬもののが原因なのか、あるいは霊能力を持つ誰かが引き起こしたものなのか、あるいは狂気のなにもののがしでかした仕業なのか。
 作品は最後まですべてを明かとしない。読者はただ、想像の翼を伸ばすのみである(どの方面にも陰気な領域しか広がっていないが……)
 これまでの作品数は五編、日本で翻訳されているものが四編、そのなかのほとんどが傑作揃いというサラ・ウォーターズ、この『エアーズ家の没落』も期待を裏切らない作品である。
 ウォーターズの作品がもっと翻訳されますように、そしてできるなら他の作家もこういたクラシカルなゴシックロマンを書いてくれないかな、と思う。
 すべてのゴシックロマン好き、すべてのお館好きに読んで欲しい作品。
 傑作。

ねじの回転 (新潮文庫)

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回転 [DVD]

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