FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

影のオンブリア/パトリシア・A・マキリップ

影のオンブリア (ハヤカワFT)

影のオンブリア (ハヤカワFT)

 世界でもっとも古く、豊かで、美しい都オンブリア。そのオンブリアの宮廷を実際に支配しているのは、いつから生きているのか分からぬ冷酷な老女ドミナ・パール。<黒真珠>とも呼ばれるこの妖女により、亡きオンブリア大公ロイス・グリーンの愛妾、若きリディアは宮殿から追放された。リディアの心は悲嘆で潰れそうだった。まだ幼き後継者カイエルのことが心配だったし、大公の妹が生んだ私生児、画家でもあるデュコンに不思議と惹かれていたからだ。
 ドミナ・パールとデュコン、そしてカイエルを軸に幾つもの陰謀劇が仕組まれる。動いていたのは、地上のものばかりではない。地下世界に生きる魔女フェイ、フェイが「自作の蠟人形」としているマグもまた、オンブリアの宮廷劇に、そしてリディアの命運と深い関わりを持つことになる。
 『冬の薔薇』ほど圧倒的な印象は受けなかったものの、エンターテイメント性と特有の雰囲気の双方があり、そこそこ面白かった。<黒真珠>と「蠟人形」の二人の女性キャラクターが、その正体も含めてお気に入りだ。
 二〇〇三年度世界幻想文学大賞受賞作。

冬の薔薇 (創元推理文庫)

冬の薔薇 (創元推理文庫)