FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

失踪家族/リンウッド・バークレイ

失踪家族 (ヴィレッジブックス)

失踪家族 (ヴィレッジブックス)

 初めて読む作家だ。
 不発に終わっている伏線もあるし、あまりにも作り込みすぎているため、やや人工的な印象を与えるが、それでも面白い作品だった。
 高校の英語・作文の教諭テレンス・アーチャーは、妻シンシアや幼い娘グレースとともに幸福な家庭を築いている。この幸福に陰を落とすのは妻のシンシアの過去だ。
 シンシアがまだティーンエイジャーだったとき、シンシアの両親クレイトンとパトリシア、そして兄トッドが、一夜にして姿を消した。シンシアはボーイフレンドと出掛けていて、その件で両親に叱られていたが、そのことが両親や兄の失踪に関連しているのか。家族はシンシアにはなんの伝言も残しておらず、二十五年経過しても、それは変わらなかった。シンシアは家族の身の上になにが起きたか知りたかったし、そして肉親に再会したかった。シンシアがテレビ番組に出演してから、彼ら夫婦の周囲の人間を巻き込んだ連続殺人事件が発生する。
 十四歳の少女のみを残し、他の家族の全員がいきなり消えうせるという謎の造形は強烈で、まことに魅惑的。「ご都合主義なことに、出てくる登場人物のほとんどが当時の事件の関係者である」という設定に多少鼻白むが、それもおまけしてあげたい。
 サスペンスの秀作。