FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

THE 4TH KIND フォース・カインド/オラトゥンデ・オス

THE 4TH KIND フォース・カインド 特別版 [DVD]

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 フェイクドキュメンタリーものの映画。「これから私はアビゲイル・タイラーの役を演じ、当時の様子を再現する」と、画面に現れたミラ・ジョヴォヴィッチがのっけから宣言する。ただし、ミラ・ジョヴォヴィッチが演じる一連の出来事が、現実なのか、そうでないのか、またアビゲイルが狂っているのか、あるいは正気で真実をそのまま語っているかどうかは見るものには最後まで分からない。その辺りは、観客の判断に委ねられる。
 就寝中に隣に寝ていた夫を殺され、ショックのあまり記憶に欠損を抱える心理学者アビゲイル。アラスカ州のノームで暮らす彼女には、患者を見ているうちにおかしなことに気づく。不眠症で悩んでいる人間があまりにも多い。そして彼らは一様に窓辺に佇むフクロウのことを口にする。アビゲイルは患者の一人に催眠療法を施すが、患者の動揺はひどいものだった。やがてその患者は自分の家族を巻き込んだ惨劇を引き起こす。しかも事件はそれだけでは終わらず、危機はアビゲイルのすぐ傍らにも忍び寄っていた。
 ややこしい話だが、この映画にはミラ・ジョヴォヴィッチの他に、「本物のアビゲイル」も登場し、過去のことを振り返る形でインタビューを受けている。またアビゲイルが治療の際に撮影した「実際の映像」や「実際の音声」もしばしば出てくる。「本物のアビゲイル」があまりにも憔悴し、心労深く見えるため、受け手は夫の死により痛みを押し殺しつつ、懸命に働くアビゲイルになにかひどいことが起こるのだと察することができる。
 「ミラ・ジョヴォヴィッチが演じるアビゲイル/本物のアビゲイル」、「再現映像/実際の映像」の対比や、最初の宣言などは、なかなか面白い試みだと思う。ストーリーの平坦さや、作中で出てくる黒幕らしき存在がどうもちゃちであるという欠点をどうにか補っているように感じられる。
 色々と評価は分かれるだろうが、当方は見て損はしなかった。