FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

死と踊る乙女/スティーヴン・ブース

死と踊る乙女 上 (創元推理文庫)

死と踊る乙女 上 (創元推理文庫)

死と踊る乙女 下 (創元推理文庫)

死と踊る乙女 下 (創元推理文庫)

 「ベン・クーパー&ダイアン・フライ」シリーズ二作目。
 陰鬱さと力強さがないまぜになった魅力は相変わらず、いやいっそう増している。職業、家族、農場……己が必要とし、そして必要とされていると信ずるものを守ろうとあがき、失い変わっていく様子を描いている。出てくる人間の数だけ、大切なものを失い、もしくは手放したものが辿り着く未来が示されるのだが、その大部分は「末路」と表現したくなるような暗いものである。しかし読ませる。
 荒野にそびえたつ遺跡<九人の乙女岩>。ここで女性の顔面が傷付けられるという事件が発生し、そののち別の女性が殺害された。<九人の乙女岩>にまつわる伝説さながらに、踊るような体勢を取らされて。
 連続女性傷害・殺人事件に挑むのはベン・クーパー刑事と、ダイアン・フライ臨時部長刑事。それぞれの個人的な事情を抱えつつ、ベン・クーパーは相変わらず純朴で仕事熱心であり、ダイアン・フライは出世して張り切っている。『黒い犬』を読んだとき、「シリーズの次の作品では絶対にお話の表舞台に出てくるだろう」と考えていたキム・アームストロング警部が今回もほぼ名前のみの登場で残念である。
 ちなみに本書が出版されたのは、二〇〇六年七月だが、それ以来このシリーズの新作は日本では出ていない。
 東京創元社さん、絶対買うからぜひとも続巻を出して下さい。

黒い犬 (創元推理文庫)

黒い犬 (創元推理文庫)