狼は天使の匂い/ルネ・クレマン監督
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店 (IMAGICA TV)
- 発売日: 2009/07/25
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大変期待して見たルネ・クレマン監督『雨の訪問者』よりも、こちらの方が面白かった。原作はデイヴィッド・グーディス、脚本はセバスチャン・ジャプリゾ。
「僕達は就寝時間が来たのに眠るのを嫌がって、むずかっている年老いた子供にすぎない」
ルイス・キャロルの言葉が冒頭で流れるのだが、この映画はこの語句通り、童心を残した男や女の物語である。全員が犯罪者なのだが。
ある理由から、ロマの人々に生命を狙われているトニー。欧州にいられなくなり、アメリカまで逃げ出すもののそこまでも復讐心に燃えるロマの追跡は止むことはなかった。やがてトニーはカナダのモントリオールまで逃げ込む。と、逃亡の際、彼は殺人事件を目撃し、二人組の犯人に連れ去られる。このままでは殺されると感じたトニーは、二人組の一人の重傷を負わせ、逃亡しようとする。しかし逃亡はできず、トニーは二人組のボス、チャーリーが住む島へと連行された。
島ではチャーリーとその一味が暮らしていた。トニーが重傷を負わせた男は、命が危うい状態だ。彼らはなにやら大きな犯罪をもくろんでいるようだった。トニーは殺されないため、彼らの仲間になるべく取り入ろうとする。
トニーが殺されるかいなかの緊張感、チャーリー一味が目論んでいる犯罪とはなにかという謎、そしてその犯罪が実行される際のサスペンス、登場人物達がためらいもなく行う殺人行為が発する酷薄さ……こういった要素とは裏腹の一同揃っての記念写真や、煙草を使っての塔作りなど子供っぽさにはひどい落差があり、どことなく異様な魅力となっている。中でも白眉は、クライマックスでの「階段に散らばっているビー玉」、ラストシーンでの「チャーリーとトニーのビー玉のやり取り」だろう。
フィルム・ノワールの秀作。
- 作者: デイヴィッドグーディス,真崎義博
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/07/15
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