薔薇を拒む/近藤史恵
- 作者: 近藤史恵
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/05/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ひどく甘美で、しかも歪んでいる。タイトルこそ『薔薇を拒む』だが、結局薔薇を拒むことができなかった、薔薇を求めることを諦めようとしてもできなかった人間ばかりが出てくる小説だ。筆者の文章と人間を見る目は繊細だが、同時に容赦なく暗い部分を抉り出してくる。
陸の孤島にある西洋館に、血の繋がらない美しい母娘が、幾人かの使用人たちと暮らしている。その館に、新たな住み込みの使用人として二人の美少年が訪れた。二人はともに両親を失った孤児で、進学への援助を得るために館で働くことになったのだ。母娘の夫であり、父親でもある資産家の男性にスカウトされて。穏やかな日常をともに送るうち、美少年達は揃って令嬢を愛するようになる。
やがて殺人事件が発生する。
殺人事件とその解決は出てくるが、そこよりも登場人物達の心理の謎、そして彼らの行きつく先こそが最大の読みどころだ。
恋愛の美しさとおぞましさをともに描いた傑作。