FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

悪魔の虚像 ドッペルゲンガー/べイジル・ディアデン監督

 ドッペルゲンガーというテーマに真正面から向き合ったホラー映画。「実は主役が狂人でした」とか、「誰かの変装でした」とか、そういった小賢しくひねったオチがないのがいい。
 若くして社会的地位、美しい妻、可愛らしい子供を持つ容姿端麗な男、ハロルド・ペルハム。交通事故からどうにか生還したとき、彼の悪夢は始まった。行ったはずのない倶楽部や店舗に彼が顔を出したと伝えられる。会社間での契約、賭場でのギャンブル、そして以前知り合った女性との浮気……どれも、彼には全く記憶がないことなのに、ハロルドがしたことになっている。やがて妻との関係に亀裂が入り、彼は精神的に不安定になっていく。「もう一人の自分」を追い、捕らえ、詰問しようとするのだが、「もう一人の自分」はなかなかつかまらない。
 奇をてらったところがまるでないのが、前述の通り好印象。しかしハロルドが異変に気付いてから「もう一人の自分」と対決までがちょっと長すぎる。起承転結で言えば、そろそろ結に入っていいはずなのに転の場面が引き伸ばされているようで、冗長な印象を受ける。
 古典的なホラー映画ファン向きの一作。古典的なホラー映画が好きな当方は、欠点があるとは分かりつつ、「見て良かった」と素直に思った。