裏切り/カーリン・アルヴテーゲン
- 作者: K・アルヴテーゲン,柳沢由実子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/08/04
- メディア: 文庫
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カーリン・アルヴテーゲンは今現在(二〇一〇年二月)で、日本で出版されている邦訳の冊数は五冊。私は四作(『喪失』、『罪』、『恥辱』、そしてこの『裏切り』)しか読んでないのだが、その中では最高傑作ではないかと思われる。ただし、途中で主人公がどれほどつらい過去を背負っていようが、最後には救済が訪れることの多い彼女の作品の中ではやや異色で、後味が少々悪い。
茶木則雄の開設ではマーガレット・ミラーやパトリシア・ハイスミスの衣鉢を継ぐ作家として紹介されているのだが、読んでいて私が連想したのはルース・レンデルだった。まずは緻密な心理描写、それから抜群のストーリーテリンクがレンデルを連想させるのだ。
周囲にそれと気付かれていない狂人。一見平凡に見えても、なにかの問題を抱えている人間。この二人の主人公が悪しき運命の巡り合わせで(というか作者の組み立てた緻密なプロットの上で踊らされ)で出会い、やがて本人達や周囲の人間に破滅をもたらしていく。こういったストーリー展開はレンデルの十八番だが、アルヴテーゲンも相当にうまい。
夫の不倫によって訪れる、夫婦の危機という凡百の題材を使い、アルヴテーゲンは切れ味鋭いサスペンスを書き上げた。個人的な感想だが、あの人の受けた罰は、罪に対してやや重すぎるような気がする。