行きどまり/パトリシア・カーロン
- 作者: パトリシアカーロン,Patricia Carlon,汀一弘
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2000/07
- メディア: 文庫
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スウェーデンの作家が書いたいいミステリを読むと、「スウェーデンにはこれほど優れた作品を書く作家さんがたくさんいるんだ。じゃあ他の北欧、例えばフィンランドやノルウェーやデンマークにだって、ミステリ読みにとって金の鉱脈がまだまだ埋もれているんじゃないのかい?」と思う。
作者パトリシア・カーロンはオーストラリア出身の作家である。そして、やっぱり当方は思う。「オーストラリアやニュージーランドには、まだまだミステリ読みにとっての金の鉱脈が……」と。
カーロンは、シンプルなストーリーのサスペンスを得手とする作家で、本書もまた例外ではない。父親が服役中のため、田舎に若い夫婦に里子として引き取られた九歳の少年ジョニー。他人に心を開かず、環境に慣れず、おまけにひどい嘘吐き(ジョニーは基本的には頭が良いので嘘は巧妙、よってばれたときに余計に周囲に大人を苛立たせる)なので、厄介者扱いされていた。ある日、彼は殺人を目撃する。しかし、誰に告げても信用してもらえない。
そして彼は、ある人物から養母のケイとともにキャンプ旅行へと誘われる。読者にも早々に明かされるが、誘ったその人物こそが殺人者だった。
ジョニーは、その人間が殺人者だと知っている。
その人間は、ジョニーが目撃者だと知っている。
当然、殺人者は目撃者を消すつもりだった。
カーロンは、この二人の苛烈な攻防を実に静かに書く。ケイの夫スチュアートはもっと早く異変に気づけよ、と読んでいて突っ込みを入れたくなる。
ジョニーが徹頭徹尾「知能は高いが可愛げがない」のがかえってリアリティがある。最後のほんの数ページまでスリルあり。