FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

世界名探偵倶楽部/パブロ・デ・サンティス

世界名探偵倶楽部 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

世界名探偵倶楽部 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  アルゼンチンはブエノスアイレス産の良きミステリ。
 「時代の移り変わりとともに変貌していく名探偵の姿」、「名探偵の助手ってなんだろう。側近なのか、引き立て役なのか、使いっぱしりなのか、ライバルなのか、師弟なのか、相棒なのか」、「一八八九年、パリ万国博覧会の前後に行われる連続殺人の謎」などが描かれた本格ミステリである。自分で書いていてもよく分からなくなってきた。しかしほろ苦く、どこかおかしく、面白い作品であることは保証したい。
 サルバトリオは名探偵に憧れる若者。ブエノスアイレスの名探偵クライグが開催した探偵術講座(一つに一つになんでやねん、と関西弁で突っ込みたくなるようなもの)の聴講生となった彼は思いがけない成り行きから、「クライグ最後の事件」と遭遇することとなり、これまた思いがけない成り行きからクライグの名代として、パリ万博に合わせて催される<十二人の名探偵>クラブ総会に出席することとなった。
 <十二人の名探偵>。様々な国籍を持つ、これまでに優れた業績を持つ名探偵達。非白人は日本人探偵サカワ一人で、残りはほとんどが欧州の人間。全員が男性。一方彼らが引き連れている助手には、白人でないものもそこそこいる。
 それぞれの国籍、それぞれの個性に合わせた探偵術、犯罪に対する考え、小道具を有している。だが、彼ら<十二人の名探偵>の名探偵の一人がエッフェル塔から転落死を遂げ、名探偵も助手も騒然とすることとなる。
 訳者あとがきによると、本作をシリーズ化するつもりはないかと聞かれた著者はもう一度使ってみたいとしてキャラクターとして、サルバトリオとサカワを挙げている。例によって例のごとく、サカワには禅の心得があるのだ。前述のように苦い結末なので、続編があるとしたら、どんな続編になるのか、期待と不安が交互に感じられる。