冬の薔薇/パトリシア・A・マキリップ
- 作者: パトリシア・A・マキリップ,原島文世
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/10/20
- メディア: 文庫
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マキリップの小説を読むのは、十年ぶりだ。いや、それ以上かもしれない。
そもそもマキリップの作品であるかどうかに関わらず、翻訳ファンタジーを久しく手に取っていなかった。
だから今びっくりしている。翻訳ファンタジーって、こんなに美しいものだったっけ、と。
登場人物の一人に「おまえさんは風と森のにおいがするね」と言われる野生の娘、木々の間をさ迷い歩くのが好きなロイズ。この野生の娘が、一人の若者に恋をした。廃墟と化していたリン屋敷に住まうコルベット。彼の祖父は、実の息子に殺され、己の後裔に対する呪詛を残して死んでいったという。
やがてロイズばかりではなく、彼女とは対照的に家庭的な姉ローレルもコルベットに恋する。だがコルベットは、偉大で、そしておぞましいものに囚われた存在だった。
物語がこれほど面白いのに、こんな表現をするのは侮辱なのかもしれないが、その物語の筋すらどうだっていい、ただひたすらこの美しい言葉の海に溺れていたいと感じさせる作品だ。詩的な文章という形容さえ陳腐に感じさせる。
乙女が、危難を乗り越えて囚われの青年を救い出すこの小説は、スコットランドの妖精譚タム・リンの伝承を下敷きにしており、また同じ伝承を題材にダイアナ・ウィン・ジョーンズが『九年目の魔法』という作品を仕上げているという。ダイアナ・ウィン・ジョーンズも著書も長い間手にしていていないのだから、こんなことを言うのは僭越かもしれないが、おそらく手触りがかなり違うものとなっているのだろう。
完璧。
- 作者: ダイアナ・ウィンジョーンズ,Diana Wynne Jones,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1994/09
- メディア: 文庫
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