ここに死体を捨てないでください！／東川篤哉

ここに死体を捨てないでください!

　「烏賊川市シリーズ」の最新作。探偵鵜飼杜夫、助手の戸村流平、ビルオーナーの二宮朱美が登場する。前作『交換殺人には向かない夜』ほどの傑作ではないが、これも大掛かりなトリックが炸裂して楽しめる。
　若いＯＬ有坂香織は焦っていた。妹の春佳の部屋に転がる死体。彼女に連絡、さっさと逃亡した妹の代わりに、この亡骸（姉妹にとってはまるで見知らぬ女性のもので、突如春佳の部屋に現れた人物だ）をなんとかしなければ。彼女は偶然知り合ったトラックの運転手……廃品回収の会社を一人で営んでいる馬場鉄男……をうまくひっかけ、死体を捨てるための旅に出る。
　一方、探偵鵜飼も悩んでいた。訪問を約束したはずの依頼人の女性が来ない。彼女はあるペンションで大きな事件が起きるかもしれないと電話で口にしていた。彼らは知る由もないが、香織＆鉄男が運ぶ死体が持っていたクリーニング店の受取証に書かれた名前と、鵜飼が電話で聞いた依頼人の名前は同一だ。依頼人の件がどうしても気になる探偵は、流平と朱美をつれてそのペンションへ。このトリオと、世にも奇妙なドライブへと出たコンビは、当のペンションで顔を合わせてしまう。そして殺人事件が発生する。
　とぼけにとぼけた連中ばかりが出てくるミステリで、脱力系のシチュエーションコメディとして楽しめる。むろん前述の大掛かりなトリックも。このまま最後までとぼけきるのかと思うきや、案外シビアなエンディングに到達する。
　楽しいことは楽しいが、すべて姉任せの妹にちょっとむかつく一作。

交換殺人には向かない夜 (カッパノベルス)