白夜に惑う夏/アン・クリーヴス
- 作者: アン・クリーヴス,玉木亨
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/07/30
- メディア: 文庫
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待ってました。イギリス最北、北緯六十度に位置するシェトランド島を舞台にした<シェトランド四重奏>シリーズの第二作。第一作『大鴉の啼く冬』が凄く良かったので、ずっと期待していた。そしてやっぱり面白かった。
シェトランド島に夏がやってきた。白夜の季節が。シェトランドの冬は長く、厳しい。だからこそ、夏は島に住まう人々を躁状態にさせる。その一種のお祭りめいた雰囲気の中、道化師の仮面をつけた男の死体が発見された。首吊りだったことから自殺ではないかとされたが、調べてみると他殺だった。男は島のものではない。こんな仮装で殺されていたこの男は、一体誰なのか。
シェトランドは実際に存在する土地だから、こんな表現をするのは失礼かもしれないが、とても狭い土地で、しかも人間関係は濃厚だ。広くない地域で、密接な人間関係を保ち続けなければならないからこそ、かえって秘密を、自分の世界を作らなければやっていけない。しかも前作とは違い、熟年の登場人物が比較的多数で、彼らは長い時間を過去に共有している分(登場人物のそれぞれが、ごくごく若い頃から知り合い同士という場合も多し)、彼ら自身が互いに抱えた秘密や事情が大きくのしかかってくる。
闇のない夜を描きながら、どこか物悲しいトーンが話全体に流れている。確かな文章力と人間観察力に支えられたお話作りのうまさは素晴らしい。やっぱりこの作家はいい。
余談だが、白夜のことを、シェトランドでは「夏の薄闇」という、と作中で紹介されている。とてもロマンティックな言葉だ。
<シェトランド四重奏>シリーズのみならず、著者の他の作品も翻訳してほしい。満足。
- 作者: アンクリーヴス,Ann Cleeves,玉木亨
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/07/01
- メディア: 文庫
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