FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

放送禁止3 ストーカー地獄篇/長江俊和監督

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事実を積み重ねることが必ずしも真実に結びつくとは限らない……。


 なんの予備知識もなく、この「放送禁止」シリーズを見た人間は、どれほど恐ろしい思いをし、そしてラストの「これはフィクションです」の言葉を見て、ほっとし、楽しんだことだろうか。
 「これはある事情で放送禁止となってしまったドキュメンタリー番組の放映」という形式をとったフィクションである。世評通り、怖い……そして面白い。「なぜこの番組が放送禁止となったのか」は直接語られはしないものの、番組そのものの中にきちんと伏線は隠されている。
 気鋭のジャーナリスト筒井令子がテレビ局のスタッフと追う、ストーカー犯罪。アパレルに勤務するOL佐々木希美は、ストーカー男の頻繁な訪問や奇妙な郵便物に悩まされていた。郵便物とは写真、それは希美を隠し撮りしたもので、裏側には「覚えていますか」や「思い出してください」などと謎めいた言葉が書かれていた。兄をストーカーによって奪われた令子は、深くこの事件に関わることとなる。希美のマンションで、彼女とともに待機する令子とテレビ局のスタッフ達。やがて彼女達の前にストーカーと思しき男が現れる。
 実は、ネタバレを知っていて見た。それでも、すごく面白かった。ドキュメンタリーとしては、一般人として出てくる女性達や子供があまりにも美形なのでやや不自然な感じも受けるし、これだけ人間が揃っていたら、誰かが必ずストーカー男の顔と素性をはっきりと確かめるはずだという疑問点も湧いてくる。そして、この一連の事件の裏側に横たわっている事情……おそらくこれゆえに放送禁止ということになっているのだろう……から考えたとき、「この人が、わざわざテレビカメラの前でこんなことをする理由はなんだ」という根本的な謎もある。しかしそういった欠点があるにしろ、この作品は意欲的で新鮮な感じがするし、すごく面白かった。
 恐怖もあるし、謎解きの要素もある。シリーズの他の作品を見るのが、実に楽しみ。