FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

毒殺魔の教室/塔山郁

毒殺魔の教室

毒殺魔の教室

 いいよ、すごくいい!
 湊かなえ『告白』があれほど脚光を浴びているならば、この塔山郁『毒殺魔の教室』だってもっと注目を集めていいはず。
 三十年前、ある小学校で事件が起きた。名家出身の優等生の少年が毒殺されたのだ。犯人と目された同級生の少年も死んだ。終わったはずの事件を、追い続ける人間がいる。事件を負う人間は、この毒殺事件をモデルにしているとしか思えない小説を偶然読み、再調査を思い立ったのだ。当時の同級生を基軸に、陰鬱なインタビューは続く。そして聞けば聞くほど、事件は様相を変えるのだ。死んだ少年二人の本当の姿とは?担任の教師の本当の姿とは?そして小説を書いたのは誰だ。
 実によくできたミステリ。そして実に嫌な物語。最後まで読んだとき、謎がすべて解けたという以外の爽快感は読者は多分得られない。
そしてこんな小学生達が実在したら、色んな意味で怖い。なにせ小学校の教室を舞台に、お昼のメロドラマか、もしくは二時間サスペンスのような愛憎劇を繰り広げているから。
 クールでひんやりとした雰囲気の奥底に、ねっとりとした情念(小学生のそれ)が秘められたミステリ。茶化しはなしで、本気で多くのミステリファンに薦めたい。

告白

告白