告白/湊かなえ
- 作者: 湊かなえ
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/08/05
- メディア: 単行本
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「面白いが、びっくりするほど後味が悪い」……それが湊かなえの作品(この『告白』も『少女』も)についてよく聞く感想だった。ネット上でも、直接顔を合わせた知人の口からも、である。
読んでみて、なるほどと思った。
面白い。そして後味が悪い。もっとも後味の悪さについては覚悟していたので、それほど大きな衝撃は受けなかった。
どんな人間でも美点と欠点があるものだが、この『告白』は、人と人との触れ合いにおいて、不幸にしてそのものたちの持つ負の部分のみが膨れ上がり、結果として更に惨劇が大きくなっていく様子を描いたミステリである。
具体的に言えば、四歳の愛娘を失った女性教師が、終業式の日、担任を受け持っていた一年生クラスの生徒達の前で、娘の死の真相を語り、犯人を糾弾したのち、その犯人達が落ちる地獄を描いた物語だ。ある種の復讐ものから感じられる、爽快さは別にない。出さないように描いたのだと察せられる。
なした悪という点では、他の登場人物に比べてさしたるものがないにも関わらず、ウェルテルという教師の持つトホホ感は大したものである。こういう奴は絶対にいそうだ。
この種のミステリが評価されると言うことは、「みんな癒し系に飽きてきたのかな?」などと疑問を抱かせてくれる一作。面白いよ。