安徳天皇漂海記/宇月原晴明
- 作者: 宇月原晴明
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/01/01
- メディア: 文庫
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壇ノ浦で平氏とともに滅んだ幼き安徳天皇。しかし彼は皆が信じている通り、入水して生命を失ったわけではなかった。妖しの術により、琥珀の玉に閉じ込められた安徳天皇は、時を、国を越えて、海中をさ迷う。安徳天皇の敵の末裔である源実朝の前に、滅びゆく南宋のやはり幼い皇帝の前に、そしてクビライ・カーンの仕えるマルコ・ポーロの前に。
無垢と怨念を同時に感じさせる、琥珀の玉に閉じ込められた少年皇帝というイメージが圧倒的。第二部での、黄金の鎖で繋がれた玉が二つ、も良かった。
頽廃的で、妖美と哀感漂う幻想小説の佳作。初めて読んだ作家なのだが、良かった。