アベラシオン/篠田真由美
- 作者: 篠田真由美
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/03
- メディア: 単行本
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「建築探偵」シリーズとも多少のつながりはあるが、一応独立した作品。
藍川芹は、イタリアには美術史を学ぶ若き日本人女性。彼女は聴講生として通っていた大学に入学が許されず、落胆していた(しかも裏には、日本の倫理では不正とされることが行われていたらしい)。彼女は、貴族の裔にして美術評論家の美青年アベーレ・セラフィーノに招かれ、彼の屋敷へと向かう。招待された理由が今一つ分からず、内心で不思議に思っていた芹だが、美術品の宝庫である彼の館には魅了され、滞在を決めた。そしてもう一つ、アベーレの弟たる車椅子の美少年ジェンティーレにも懐かれ、彼女もまた愛着を覚えた。
聖天使宮。かつて欧羅巴を支配した王族の血を引く彼らの館は、さながら一つの美しく閉ざされた世界だった。だがそこは、欧州の光のみではなく、闇をもふんだんに湛えていた。
やがてこの閉鎖的な世界で、酸鼻な連続殺人事件が発生する。
ナチス、錬金術、アーサー王伝説、畸形、西洋美術、ギリシャ神話……これらの単語に反応したらぜひ。皆川博子の歴史幻想小説と共通する雰囲気をたたえている、と思ったら皆川博子が解説を書いている。
分厚く、おまけにとっつきやすいとは言えない内容だが、間違いなく篠田真由美の代表作となるはず。暗く華やかなゴシックロマン。