FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

竜ひそむ入り江の秘密/ジェニファー・セント・ジャイルズ

竜ひそむ入り江の秘密 (扶桑社ロマンス)

竜ひそむ入り江の秘密 (扶桑社ロマンス)

 「キルダレン」シリーズの第二弾。今度はキャシーの妹、アンドリーことアンドロメダがヒロイン。前作ですべてがあかされることのなかったメアリーの死の謎、レディ・ヘレン殺人事件の真相が読者に明らかになる。
 キルダレン城主ショーンと結ばれてからも、キャシーの顔は晴れることがない。彼女の心を悩ませているのは、キルダレン家に伝わる不吉な伝説と、そしてかつて起こったレディ・ヘレン殺人事件だ。アンドリーは姉の幸福のため、そしてみずからがショーンの双子の兄、ブラックムア子爵アレックスに惹かれているため、ドラゴンの入り江城へと乗り込む。表向きは城の古美術の整理を口実として。やがてこの辺りで起きている女性連続殺人には奇妙な共通点があることにアンドリー達は気づく。
 翻訳者もあとがきで指摘しているよう、ゴシック小説の趣は前作より薄い。これはヒロインに「メイドとして身分を隠したまま、城内を中心として殺人事件の調査をしなければならない」という縛りがないためだろう。しかし明かされる犯人はそこそこ意外で、驚いた(こう書くとミステリのファンにはばれてしまうか)。ロマンスとしての色彩も強いが、サスペンスにも手を抜いておらず、そのところに前作同様好感が持てる。おそらく第三弾が三姉妹の三女ジェミナイをヒロインとして、逃走した犯人との海での追跡劇になるのだろうが、これも出てほしい。
 実は扶桑社ロマンス文庫を手に取るのはこれが初めてだったのが、想像していたよりもずっと面白かった。どちらもヒロインの恋人の影が薄い(出てくるとひたすらヒロインに口説き文句を繰り返すのみで、これといった印象的な言動がない、総じて出てくる女性の方がずっとキャラクターが立っている)のが難点だが。
 この文庫に、歴史もののゴシックサスペンスがあるのならばもっと手に取ってみたい。このシリーズ、良かった。