FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

禁じられた城の秘密/ジェニファー・セント・ジャイルズ

 

禁じられた城の秘密 (扶桑社ロマンス セ 2-1)

禁じられた城の秘密 (扶桑社ロマンス セ 2-1)

 鮮烈なピンクの背の扶桑社ロマンス文庫を手に取るのはちょっと恥ずかしかったが、「傑作ゴシック・ロマンス」のあらすじに踊らされて購入した。「どうせゴシック風味のラブストーリーなんだろうな」などと思っていたが、過剰な期待をせずに読むとなかなか面白い。
十九世紀、英国。若き女性キャシーことカシオペアは他者の死を夢で見ることができる、不思議で不吉な能力があった。ある日、その夢に映し出されたのは仲良しの従姉妹メアリーの死の様子だった。彼女は勤め先であるコーンウォールのキルダレン城より謎めいた失踪を遂げている。メアリーが誰かに殺害されたのではないかと感じたキャシーは、メイドとして城へと忍び込んだ。相棒となったのはメイドのブリジット、彼女の姉フローラもまた行方をくらましていた。やがてキャシーはキルダレン一族の不吉な伝説と、過去に起こった殺人事件と、そして下層階級の人々の過酷な生活の現実を知る。
 「キルダレン」シリーズの第一弾。双子の男児は必ず互いに殺し合うと言われるキルダレン一族を描いたシリーズである。現当主アレクサンダーとショーンの一卵性双生児も、仲が悪い。かつては無二の親友だった彼らは、ある一人の女性を揃って愛し、そしてその女性が殺害されたことで敵同士に落ちたのだ。
 ロマンスもさることながら、ゴシックサスペンスの部分もなかなか面白い。正直にいって、ロマンス部分よりもこのサスペンスの方が面白かった。なにせヒロインの恋の相手ショーンは美男で大金持ちという設定ながら、出てくれば「キャシーを口説く」、「キャシーに迫る」といった単調な動きしか見せなかったから。いい設定なのに惜しい。もっとも吸血鬼ではないかと噂されるこの男性が「なぜ昼には人前に姿を見せないか」にきっちりとした理由があるのは嬉しかった。こういうところがちゃんとしているから、サスペンスが効いているのであろう。
 ビクトリア・ホルトやフィリス・A・ホイットニーが好きなら面白いはず。レディ・ヘレン殺しの真相も楽しみだし、馴染みのないジャンルながら、なかなか面白かった。