他言は無用/リチャード・ハル
- 作者: リチャードハル,Richard Hull,越前敏弥
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2000/11
- メディア: 文庫
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なぜ彼らはこんな嫌な思いをしてまでクラブに通うのだろう。それが読書中にずつと脳裏を離れない疑問だった。ひょっとしたらかの国では、どれほど感じの悪いクラブであろうと通い続けなければひとかどの英国紳士として認められないかもしれない。
舞台となるホワイトホール・クラブも嫌な奴だらけである(料理は美味らしいのだが)。その中でも、一、二を争う嫌われ者が死んだ。青褪めたのは幹事と料理長だ。彼らのみは、その死が料理長のミスによるかもしれないと知っていたからだ。死者が持病持ちだったことから、どうにか自然死として決着をつけるが、そのときから脅迫状が幹事の元へと届くようになった。このクラブのメニューをああしろ、人事をああしろといった、あからさまに悪意が感じられ、ねちっこく細かく嫌らしいものだった。
嫌なクラブで、嫌な奴が殺され、嫌な脅迫状が届くというミステリである。しかし読んでいて楽しい。読者であるこちらが嫌な奴のせいかもしれないし、主役級の幹事のみがなぜか弱気でそれなりに善良でヘタレ(そうでなければ、この曲者揃いのクラブはとっく分解していただろう)であるせいかもしれない。
結末はなんとはなしに見当がつくものの、そこそこ面白かった。