FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

還らざる日々/ロバート・ゴダート

還らざる日々 上 (講談社文庫 こ 51-12)

還らざる日々 上 (講談社文庫 こ 51-12)

 ロバート・ゴダード、唯一のシリーズ作品である。当方、このハリー・バーネットのシリーズを初めて読むので不安だったが、三作目から読みはじめても特に困るところはなかった。ロバート・ゴダード特有の物語の芳醇さはいくらか感じにくいが、ごくごく普通のサスペンスとしてそこそこ楽しむことができる。
 ハリー・バーネット、六十九歳。現在妻子とともに平穏に暮らす彼の元へ、五十年前に所属していた空軍の同窓会の案内が届いた。実は彼は五十年前は落ちこぼれ軍人で、同じく落ちこぼれ軍人十数人とともにスコットランドの城館で、ある実験に参加させられたのだ。このたびの同窓会のメンバーは、そのときのメンバーだ。年齢が年齢なのですでに鬼籍に入っているものも複数いる。同窓会は最初から波乱含みだった。途中でメンバーの一人が失踪し、やがてメンバーは次々と殺されていく。殺人者の嫌疑をかけられたハリーは、かつての相棒バリーとともに現在の殺人事件と、過去の実験の謎を追う。
 ものすごく面白いわけではない、ゴダードその人ならではの個性も醸しだしていない、しかもオチが安易だが、しかしエンターテイメントとしてのツボをよく押さえており、なかなか楽しめた。下巻で読者の目の前にようやく登場するある女性の、犯人達に対する態度はなかなか度胸の据わったもので、良かった。
 そこそこ面白い。

還らざる日々 下 (講談社文庫 こ 51-13)

還らざる日々 下 (講談社文庫 こ 51-13)