FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

処刑人の秘めごと/ピーター・ラヴゼイ

処刑人の秘めごと (ハヤカワ・ノヴェルズ)

処刑人の秘めごと (ハヤカワ・ノヴェルズ)

 『偽のデュー警部』や『マダム・タッソーがお待ちかね』はラウゼイの代表作というにとどまらず、現代の本格ミステリを代表する傑作だった。しかし才人の彼と言えども、あれほどの作品を次々と世に放つことができるわけではない。分かってはいるが、最近の「ミステリとしてのアイディアの良さではなくて、ストーリーテリングの巧みさで読ませるよ」タイプの連投はちと厳しい。今回はサイコ・サスペンス風である。
 最愛の妻ステフを失い、数年が過ぎた。そんなダイヤモンド警視の前に、奇妙な求愛者の女性が現れた。正体を示さず、姿を見せない。だがしつこく手紙や贈り物が届く。
 連続首吊り事件に頭を悩ませるダイヤモンド警視は、一人の魅力的な中年女性と知り合う。当然読者にはうさんくさく感じられるこの女性と、ダイヤモンド警視はいい仲になっていく。
 「この話の流れなら、こいつが犯人だろうな」という人間が犯人である。作者がラヴゼイでなけれぱ途中で投げ出していたかも。どうもここ最近のラヴゼイは物足りない。
 訳者のあとがきで紹介されているヘン・マリン警部ものの二作目が楽しみである。