FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

嘆きの雨/マリリン・ウォレス

嘆きの雨 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

嘆きの雨 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 訳者があとがきでメアリ・ヒギンズ・クラークに似ていると書いているけれど、確かに彼女の傑作『子供たちはどこにいる』のストーリーや設定を連想させられるミステリだ。実子を殺され、しかもその犯人ではないかと疑われた母親が再び窮地に陥るというストーリー展開が同じである。
 元造園家だったリンダは、建築家である夫マシューとともにひっそりと暮らしていた。三年前、夫妻の娘エイミーは惨殺された。しかも忌まわしいことに容疑者とされたのはリンダだった。どうにか無罪は証明されたものの、リンダの心の傷は癒されなかった。そして再び悪夢は蘇る。またもや少女が殺され、他の少女も行方不明となった。現場にはエイミーのときと同様、凶器と切り裂かれた人形が転がっていた。リンダは恐怖し、そしておぞましい疑惑に悩まされる。夫マシューこそが、連続少女殺人犯ではないだろうか、という。
 優美繊細にして、とても陰気な物語である。実はこの『嘆きの雨』はシリーズもので、主人公は毎度変わるのだが、脇のオークランド警察殺人課の面々は毎度出てくるらしい(だから、シリーズの他の巻はひょっとして明るいのかも)。「心理サスペンス+刑事もの」という作品で、名作『子供たちはどこにいる』には及ばないものの、そこそこ楽しめる。ところでリンダよ、そんな夫でいいのか。
 作者マリリン・ウォレスは女性ミステリ作家の短篇を集めたアンソロジー『シスターズ・イン・クライム』の編者でもある。読んだのはもう十年近く昔だが、こちらもなかなか面白かった覚えがある。