すべてのものをひとつの夜が待つ/篠田真由美
- 作者: 篠田真由美
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2005/07/20
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孤島に建つ西洋館を舞台にしたゴシック・ロマンス「さいはての館」シリーズ第1作だ。
なんともクラシカルなことに、メインテーマは宝探し。
本州最南端の半島沖の小島に佇む西洋館。その館に、五組十人の男女が足を踏み入れようとしていた。彼らはいずれも大富豪、満喜家の血縁に当たる。彼らの中から、膨大な財産を受け継ぐ満喜家の後継者が選ばれるのだ。より正確に言えば、十日間の間に、この屋敷の中から満喜家の宝である大きなダイヤモンドを見つけたものに。
子供の頃から主従の関係を強いられてきた又従兄弟に引きずられたやってきた大学生、佐伯杜夫の目には館はひどく禍々しさを、そして後継者選びそのものにもうさんくささを覚えていた。うさんくさいと言えば、ライバルでもある他の四組もだ。高校生の少年コンビ、若い女性のコンビ、母娘であろうよく似た女性コンビ、そしてインテリ男とびっくりするような美少女のコンビ。
宝探しが始まった次の朝、参加者の一人が浴室に吊るされる。外部との接触は一切ない空間であるにも関わらず。宝への欲と殺人鬼への恐怖との間で揺れる参加者の間で、一人、また一人と人々は生命を奪われていく。
美しい館というより、美しき牢獄を描いた作品として忘れがたい。登場人物の真実すべてが読者に明かされるわけでせはないのだが、そこがかえって神秘性を醸しだしている。もっとも年齢に似合わぬ登場人物に話し方が興ざめ、それが大きな欠点の一つだった。大きな建築物を舞台としたホラーであり、ミステリでもあり、冒険小説でもあり、伝奇小説の部分もあり、恋愛小説でもある。要するにゴシック・ロマンスだ。
第2作『美しきもの見し人は』ほどの秀作ではないが、そこそこ面白い。
- 作者: 篠田真由美
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