名探偵のコーヒーのいれ方/クレオ・コイル
名探偵のコーヒーのいれ方 コクと深みの名推理1 (ランダムハウス講談社文庫)
- 作者: クレオ・コイル,小川敏子
- 出版社/メーカー: ランダムハウス講談社
- 発売日: 2006/10/02
- メディア: 文庫
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「コクと深みの名推理」という副題がつけられたシリーズものの第一巻である。コージー・ミステリを久しぶりに読んだ。そして改めてその美点と欠点が分かった。
ヒロインはクレア、三十九歳、バツイチ、一人の女の子の母親で、ビレッジブレンドという老舗コーヒーハウスを経営している。おお、いかにもなコージー・ミステリのヒロインだ。
愛してはあるがやはり大変なコーヒーハウスの経営の中で、もっと大変なことが起きた。彼女が信頼し、好意を抱いていたアシスタント・マネージャー……まだ二十歳そこそこで、ダンサーを夢見ている……アナベルが店の階段から落ちて(落とされて?)大怪我を負ったのだ。性質の悪いクレーマーであるアナベルの継母や、魅惑的ではあるが奔放すぎて恋愛や結婚のパートナーとしてはまったく当てにならない元夫マテオに悩まされながら、クレアは調査を始める。
いいところは、精彩あふれる人物描写と、謎解きには直接関係ない豆知識。近頃のコージー・ミステリには一風変わった職業についているキャリア・ウーマンが多く、その仕事にまつわるちょっとした知識が作中で披露されることがままある(しかもイラスト付き)で、下手をするとこれは嫌味や邪魔になりかねないのだが、このシリーズは案外うまくそのコーナーが作ってある。イブリックやサモワールなど「ほほう、そんなものがあるのか」と思わせた。
悪いところは、「あんたたち、警察官でもないのにその行為は犯罪だろッ。犯人じゃなかったらどう謝罪するんだよ」と突っ込みたくなるところが多すぎるところだ。
ミステリ部分もそこそこ面白かった。続巻も読むことにする。