ウースター家の掟/P・G・ウッドハウス
- 作者: P.G.ウッドハウス,Pelham Grenville Wodehouse,森村たまき
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2006/03
- メディア: 単行本
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初めて読むウッドハウスの長編である。実にいい!
訳者による解説によれば『よしきた、ジーヴス』の続編とのことだが、そちらを読んでなくとも十分に楽しめる。
有閑青年バーティーが二組のカップルと、ウシ型クリーマー、そして一冊の手帳に散々振り回される物語である。二組のカップルのうち、女性の一人は百パーセント天然のぶりっ子で人を苛々させる能力にはふんだんに恵まれており、もう一人は気の向くまま、やりたい放題で男をトラブルに巻き込む能力は天才的という娘である。困ったことに、それでいて魅力がある。残る二人の男はどちらも善良だが、どこか抜けている。この二人のカップルの恋を成就させるため、そしてある理由からウシ型クリーマー、そして一冊の手帳を手に入れるために奮闘するバーティーだが、ありとあらゆる出来事が次の厄介事を呼ぶ罠となっており、分刻みで違う災難が次々と彼の上へと降りかかってくる。
バーティーを助けるのはむろん完全無欠の執事ジーヴス。しかし今度という今度は、彼でさえ一時は劣勢に立たされるのだ。愛する御主人様とともに、箪笥の上へと追いつめられるのだ。
「よくも次々とこんなしょうもない出来事が」
呆れ半分、失笑半分で呟きつつ、
「だけどこんな友達を見捨てないバーティーはいい奴だな。そしてバーティーをひたすら助けてくれるジーヴスもいい奴だな」
と思わず呟いてしまう。皆もう少しバーティーにかけた迷惑について思いを馳せるべきである。
とにかくよくできた話。しかしながらマデラインもスティッフィーも実際に友人として傍らにいたら、ぶっ飛ばしてしまいそうだ。