悪夢の宿る巣/ルース・レンデル
- 作者: ルース・レンデル,小尾芙佐
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1987/06
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
完全殺人の計画・実行とその破綻という、レンデルにしては比較的珍しいストレートな内容の犯罪小説である。
強欲なおかつ強情、生命力旺盛で、今は亡き夫とともに資産を築き上げた老女モード。彼女は一人娘ヴィーラを愛し、甲斐性なしの娘婿スタンリーを嫌いぬいていた。
強欲でやはり強情、知能は水準以上なのに、本人の根気のなさと一攫千金をいつまでも狙う性格ゆえに職を転々としている男スタンリー。彼は、もし真面目な性格で堅実な職についていたら、高級取りになっていただろう頭脳の綿密さを全てクロスワードに注いでいた。そしてモードの死と、その後に転がり込んでくるであろう大金を夢見てきた。愛してもいないヴィーラと結婚したのもそのためだ。
クリーニング屋の店員をしながら、半ば一人で夫婦の生計をまかなってきたヴィーラ。夫も母親も愛している彼女は、二人の争いに心痛め、またうんざりとしていた。
やがてスタンリーは義母の遺産を待つばかりではなく、みずから行動をおこすことによってせしめようとする。そう、義母殺しという行動によって。だがことはそう簡単に運ぶわけはなかった。スタンリーの強欲は彼自身を破滅に追いやるのだ。
クロスワード・パズルに一つに文字を入れ間違えてしまえば、その後延々と正解に辿り着けないように、スタンリーはミスを犯し、そのミスがどんどんと広がって追いつめられていく。スタンリーが犯罪発覚の恐怖のため、次第に精神的におかしくなっていくくだりのサディスティックな描写は冴えに冴えている。さすがにレンデル。
秀作。