完璧な家/B・A・パリス
サイコサスペンスにして、サンドリーヌ・コレット『ささやかな手記』やシェヴィー・スティーヴンス『扉は今も閉ざされて』のような監禁状態に置かれた人間の戦いを描いたミステリでもある。
豪邸で暮らす、完璧に幸せな夫婦……しかしそれは虚像であり、ハンサムで大金持ちである夫は、支配欲が強いうえ、人の恐怖を精神上の大好物とする異常者だった。過去に実際に人を手にかけたことがある。
それと知らずに結婚し、障害者の妹を人質にとられた妻は、なんとかして妹とともにこの地獄の生活から脱出しようとする。ただ妻を罰するためにだけ仕掛けられた夫の罠を潜り抜けながら。
シンプルでありながら面白いサスペンスだった。しかしあれ、と思ったのは結婚した途端、嗜虐癖を持つ夫が自分の過去の罪業や本当の性癖についてぺらぺらとすべて妻に話してしまうこと。これを聞かされた妻が、もっと衝動的な行動に出たらどうするんだと思ってしまった。
動物好きにはつらい場面もあるが後味も悪くない。ヒロインの活躍ににやりとできる秀作。