断頭島 ギロチンアイランド/フレイザー・リー
なにか気楽に読めるホラー小説を、という理由で購入した作品である。お国柄、あるいは出版社が狙った読者の対象の違いなのか、木崎菜菜恵『ラビット・ケージ 一年A組 殺戮名簿』(http://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/20170614)
のような感傷や湿り気を帯びた情緒はまったくないホラー小説である。
代わりに言ってはなんだが内臓の描写がわりと多いのでスプラッターが苦手な人は注意。
母国で貧しく惨めな生活を送っていた若い女性が、富豪が所有する南国の島での、きわめて気楽な仕事を手にいれる。ただし外部との連絡は一切禁止。始めた仕事は環境も含めて快適で、同僚であるボーイフレンドや同性の友人もできる。がホラー小説だから、当然罠が待っており、地獄が始まる展開になっている。
ヒロインがやたらうまい仕事を得てから、さて彼女を待ち受ける「地獄」となんだろう、金持ちたちのマンハント、土地の宗教の生け贄など色々と想像するが、黒幕の一人も含めてちょっとした意外性があるものである。
この邦題(原題は¨The Lamplighters¨、ヒロインが手に入れた「点灯員」という仕事のこと)だが、ギロチンは出てこない。
ラビット・ケージ 一年A組 殺戮名簿/木崎菜菜恵
ラビット・ケージ 一年A組 殺戮名簿【電子書籍】[ 木崎菜菜恵 ]
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「なにか軽い感じのホラー小説が読みたいな」と思ったとき、ふと目に入ったので購入した作品。集英社オレンジ文庫というおそらく若い女性が主な読者であろうこの叢書に、「強制的にかつての校舎に集められたクラスメイト。着ぐるみを着た化け物が現れ、皆を殺していく」というB級ホラーそのまま小説が入っているのが不思議だ。犯人はもちろん「いじめられっ子」。
肝心の出来栄えだが、それほど悪くない。この手の小説、しかもへぼいものだとただ殺しの描写のみに力が入っていたり、人間、そして人間関係の醜悪さがむやみに強調されていたりで、ストーリーらしいストーリーものすらないものがあるが、この作品は新しい部分はまったくないものの、読みやすさという点は抜群。ほとんどひっかかところがなく滑らかに読める。もちろん前述の殺戮や人間関係の醜悪さが入っている。友情と殺人鬼との闘いとともに。
どうにかして生き延び、着ぐるみの殺人鬼と戦おうとする主人公グループのキャラ立ちもよく、そのうち売り出し中の美少年および美少女アイドル主演でホラー映画になるのではないかと思われるほどだ。
ほんのわずか、本当にわずかながらロマンスの成分があり。いかにもホラーらしく、お約束のあれをやって終わった。
雪盲/ラグナル・ヨナソン
〈ダーク・アイスランド・クライムシリーズ〉の第一作目。シリーズのタイトルから察することができるよう、アイスランドを舞台にしたミステリである。作者のラグナル・ヨナソンには「アイスランドのアガサ・クリスティ」という異名があるというが、この「**のクリスティ」という異名をつけられる作家としては珍しく男性作家である。
アイスランドの実在の都市シグルフィヨルズルを舞台にしており、実在はしないがアガサ・クリスティのセント・メアリ・ミード村、そして実在する都市を舞台にしたアン・クリーヴスのシェットランド島を舞台にしたシリーズを思わせる。
登場人物の描写や人と人の関係の中に殺人事件を解くヒントが隠されていることも共通点である。
田舎特有の濃密な人間関係、過去から続く因縁、国家そのものすら危うくなるほどの経済的不況もあいまい、閉塞感がさらに強くシグルフィヨルズル。この暗い時代のシグルフィヨルズルで謎を解くのは24歳の青年警官、アリ=ソウル・アラソン。かつて神学と哲学を学んだ変わり種だ。首都レイキャヴィークに、彼のシグルフィヨルズルでの就職に賛成してない恋人を残してきたが、新天地で新たな恋と出会う。
彼が巻き込まれたのは、地元の劇団で起きた殺人事件。殺害されたのは高名な作家だった。
シリーズの他の巻も日本で刊行が決まっており、めでたい。謎解きとともにアリ=ソウルの成長やロマンスが描かれるのだろう。楽しみである。
本日のお買い物
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リチャード・フランクリン監督『サイコ2』。これは見る前にアルフレッド・ヒッチコック監督『サイコ』を見直すつもり。
インビテーション/カリン・クサマ監督
これはクライマックスにおける「爆発」、そしてあのオチを含んでの感想となるが、どうも見る前の期待値が高すぎたためか、やや物足らないものを感じた。
あるカップルが向かう一軒の家(この家に到着する前に、コヨーテと思しき動物を轢いてしまい、瀕死の動物を男が安楽死させなければならない場面が、すでに不吉さを高めている……)。
目的の家に集まっていたのは、男の元妻と、旧友たち、そして見知らぬ男女。彼らの間で交わされる台詞、そして映し出される断片的な映像から、子供絡みの悲劇があり、離婚もおそらくそれが理由で、元夫婦のどちらもがまだ心の傷から立ち直っていないことが示される。
そして男の知らない客である男女がカルト宗教の信者だと分かったときから、パーティーの雰囲気は一気に不穏なものとなる。
不穏な空気が流れるが、なかなかストーリーが展開しない。しかし、この先にきっとすごいことが起きる、そんな期待を観客にさせる空気が絶えず漂っている……が、この「すごいこと」もちょっと物足りない感じではあった。あのオチ(同じランプを掲げている家はやはり皆殺人や心中をもくろんでいるのだろう)の効果もまあまあといったところ。