FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

ワイルダーの手/J・S・レ・ファニュ

 東京創元社から短編集『ドラゴン・ヴォランの部屋』が出版されたことで、改めて「J・S・レ・ファニュは面白い」というありふれた感想を抱いた。以前にも読んだことはあるが「ティローン州のある名家の物語」が特にいい。気品と恐怖が等分に感じられる。
 ところでJ・S・レ・ファニュには三大長編『ワイルダーの手』、『アンクル・サイラス』、『墓地に建つ館』がある。このうち『墓地に建つ館』は明確に読んだことがないと分かっており、『アンクル・サイラス』は明確に読んだことがある(素敵なゴシックロマン!)と分かっている。だが『ワイルダーの手』は読んだことがあるかどうか覚えていなかった。
 そのため、もう一度読んでみることにした。結果「読んだことはあるのだろうが、内容を忘れていたのだろう」という結論に達した。つまらなくはないが、ありふれた内容だったからだ。
 私が読んだ『ワイルダーの手』は国書刊行会の世界幻想文学大系に収録されているものだが、この作品そのものは幻想文学や怪奇文学ではなく、犯罪小説、スリラーである。
 互いに血のつながりがある三つの名家ブランドンとワイルダー、レイク。この三家の愛憎や財産を巡る争いがあり、美女がおり、悪漢がおり、犯罪が起こる。
 クラシックなスリラー小説。