月明かりの男/ヘレン・マクロイ
鳥飼否宇の解説は「ここ数年のヘレン・マクロイ人気には目を見張るものがある」と始まる。
ふと調べてみると、ベイジル・ウィリング博士シリーズの長編は全13作品のうち、実に12作品までが邦訳されている。残った作品『The Long Body』も2018年に刊行が予定されているので、結局ベイジル・ウィリング博士シリーズは2018年にはすべての作品が邦訳されることとなる。
この『月明かりの男』は12番目に邦訳された作品である。この邦訳の順番は、この作品に関しては、作品の質に関係があると思わせる。大学内の殺人事件を扱ったもので、のちも妻となる女性ギゼラが初登場するなど、決してつまらないとは言わない。しかし先に邦訳された『小鬼の市』や『逃げる幻』に比べ、彼女特有の暗さと華やかさを併せ持つ魅力、そして単純に謎解きの面白さがやや劣る。
『The Long Body』はどうなんだろう。不安と期待が同時にある。