偽りの楽園/トブ・ロブ・スミス
『チャイルド44』などレオ・デミドフ三部作の評判は聞いていたが、自分の好みに合わないと思いスルーしていた。『偽りの楽園』はノンシリーズ作と知り、手を出した。
大当たり。
すごく面白かった。
上下巻のミステリで、その多くの部分が、主人公の母親の、ある犯罪への告発で占められている。こう言った体裁の小説だとやや単調になってしまう場合もあるのだが、それを上手く読ませる。
主人公がそれまで仲睦まじい夫婦と信じていた父母。彼らは引退し、母の母国(作者の母の母国でもある)スウェーデンの田舎で農場を営んでいたはず。しかし主人公の男性の前に現れた、母は父が犯罪に関わっていると言い、父は電話口で母が狂っていると言う。どちらだ。どちらが真実を話しているのだ。この主人公の混乱はそのまま読者の混乱である。しかも母は、故郷で起きた最悪の出来事がなんであったが(察しはつくが)なかなか語らない。焦らされる、焦らされる。
明かされる真相と合わせ、実に読み応えのあるサスペンス小説である。
しかし、この上下巻は一冊にまとめても良かったような気がする。