女神は禁じられた果実を/パム・ローゼンタール
以前から気になる作家だったので、手に取ってみた。
もっと早く読めば良かった。
ヒストリカルロマンスそのものを読むのが久しぶりだったので、半ばリハビリのつもりだったがこれは良いリハビリになった。
若さゆえ短慮な言動を取ってしまう多いヒロインが多い中で、ヒロインのマリーナは情感豊かな大人の女性である。ヒーローのジャスパーもそうだ。しかし大人であるがゆえに心の赴くままに突っ走ることができない。
ジャスパーは四十代の古代美術の学者、マリーナは三十代の流行作家で社交界の花形。訳者のあとがきにあるよう主役二人はこの種の小説としてはやや年嵩であり、脛には傷があり、人には知られたくない秘密があり、自らの力で築き上げてきた地位がある。
二人は惹かれ合うものの、過去に起きた出来事やら、現在抱えているものやらのせいで、その恋路はうまく進まないのだ。
どちらかと言えば地味な話だが、文章がうまく、感情表現が繊細で、RITA賞(アメリカロマンス作家協会が、その年のすぐれたロマンス小説に送る権威ある賞)の貫禄十分。
傑作。