FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

エル・ゾンビ IV 呪われた死霊海岸/アマンド・デ・オッソリオ監督

 マイミクの存英雄様の好意で見せていただいたホラー映画の一つ。
 旧ビデオ時のタイトルは『テラービーチ/髑髏軍団美女虐殺』。ごたいそうなタイトルだが、シリーズの第一作『エル・ゾンビ I 死霊騎士団の覚醒』など、旧ビデオのときは『エルゾンビ/落武者のえじき』というタイトルだった。多分見た人全員が、テンプル騎士団は落ち武者じゃないよ!」と突っ込んだと思う。
 一九七〇年代に発表されたスペインのホラー映画のシリーズで、四作通して黒魔術に淫し、処刑されたテンプル騎士団が現代にゾンビとして蘇るという設定だ。というとなにやらきわものめいて聞こえるかもしれないが、副題よりはるかに落ち着いた印象があり、古典的なゴシックホラーの雰囲気を濃厚に漂わせている。廃墟と化した修道院、幽霊船、忌まわしい伝説と因習が残る寂れた海辺の村と各舞台もばっちりである。なにより襤褸をまとった骨のみの姿で、愛馬にまたがって闇より現れるゾンビ騎士団の造形美が良い。
 ゴシックホラーとゾンビの取り合わせも珍しいが、第一作が良かったホラー映画のシリーズが、巻の数を重ねても面白いままというのが凄い。監督が一貫してアマンド・デ・オッソリオだったの良かったのだろう。
 シリーズ中、当方が付けた順位はこの四作目『エル・ゾンビ IV 呪われた死霊海岸』が一番、二番が『エル・ゾンビ II 死霊復活祭』であろうか。しかし、他の作品もいい。
 四作目は、閉鎖的な海辺の村に引っ越してきた医師とその妻が主人公だ。主役の前任者である老いた医師は逃げるように土地を去っていく。唯一の医療従事者となるためにやってきたのに、新参者として、村人からつまはじきにされる夫妻。夜の村に鐘が鳴り響いたとき、海より忌まわしいものたちが現れ、七夜に渡っておぞましき儀式が行われるのだ。
 この四作目、実のところゾンビものというより、伝説の悪霊ものといった印象が強い。このモンスターの特徴の一つであり、また見るものに恐怖を与える最大のポイントである、「ゾンビに噛まれたものもまたゾンビになる、人間ではなくなる」という点が前面に押し出されていないからだ。ついでにゾンビも怖いが、異常な儀式にまったく異を唱えず、たとえ対象が我が子であろうが、粛々と生贄を差し出す村人達も結構な怖さを与える。
 いちように黒衣をまとった村の女性達の姿は、同じスパニッシュホラー、マテオ・ヒル監督『エル・タロット』を思わせる。もちろん、『エル・ゾンビ』シリーズの方がずっと早く発表されている。
 傑作。

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