FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

虹色にきらめく渚で/リサ・クレイパス

 『奇跡は聖なる夜の海辺で』に続く“フライデー・ハーバー”シリーズ第2作。リサ・クレイパスは言わずと知れたヒストリカルロマンスの大御所だが、コンテンポラリー(現代を舞台にしたロマンス小説)もうまい。
 クレイパスのみならず、ヒストリカルロマンスの大部分が、十九世紀の英国の貴族社会を舞台にしているため、やや登場人物の人格や、貴族という身分も含めて職業、そしてその身分の人間に周囲が求める礼儀作法のため、言動が型に嵌ったところがあるのに対し、コンテンポラリーは、ヒーローもヒロインも脇役も多彩な職業、多彩な振る舞いで楽しめる。
 『虹色にきらめく渚で』の、ルーシーの妹アリスや、元恋人ケヴィンの駄目人間ぶりが実によく書けている。ただこの物語に魔法の力はいらなかったと思うけれど。
 幼いころ難病に侵されため、両親の愛情を一身に受けてきた(とヒロインには思われた)妹アリスに比べ、自分は大事にされていないとずっと感じてきたルーシー。長じて優れたガラス工芸家となった彼女だが、二年間同棲してきた恋人ケヴィンを、こともあろうに妹に奪われ、あてもなくフライデー・ハーバーへと足を運ぶ。
 そこで、サンフアン島でブドウ園を営むサムと出会い、互いに次第に惹かれていく。
 恋人を奪ったが、今までと変わらず自分と姉妹として仲良くして欲しい、自分とケヴィンとの結婚式にも喜んで出席して欲しい(!)という妹、自分の周りにちょろちょろと現れ、勝手なことを口にするケヴィンに悩まされながら、サムとの愛を育んでいく。
 不細工な犬レンフィールドが、相変わらず可愛い。
 三作目と四作目が楽しみ。