ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密/トマス・H・クック
ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
- 作者: トマス・H.クック,Thomas H. Cook,駒月雅子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/02/07
- メディア: 単行本
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ミステリ映画では、一月に「2014年マイベスト10映画」に入るだろうスペインのミステリ映画、オリオル・パウロ監督『ロスト・ボディ』(http://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/20140121)と出会ったが、二月に「2014年マイベスト10ミステリ」に入るであろう、作品と出会った。名手トマス・H・クックの新作である。相変わらずとびきりうまい。
同じく早川書房から出版されている『ローラ・フェイとの最後の会話』、『キャサリン・カーの終わりなき旅』に続いて邦訳された「人名シリーズ」(と呼んでいいのか?)の邦訳三作目である。
『キャサリン・カーの終わりなき旅』はこのシリーズ、というよりトマス・H・クックの著作全体の中でも異色作だったが、この『ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密』は『ローラ・フェイとの最後の会話』とよく似た手触りを持っている。事件があり、人の生命が失われており、解かれていない謎があり、語りの大部分が主人公の追憶だ。文藝春秋から出版されている記憶シリーズを思わせる。
作中で、印象に残るシーンとして゛ザチェム゛という言葉が紹介される場面がある。前後の会話から察しておそらくロシア語で、「なぜ」という意味だ。
作中にはいくつもの「なぜ」が飛び交い、物語を推進させていく。
なぜ、幼馴染の親友、才能ある作家だったジュリアンは自殺したのか。
なぜ、アルゼンチンの女性ガイド、マリソルは失踪したのか。
なぜ、ジュリアンはマリソル失踪の真相解明に異様に熱心だったのか。
すべての゛ザチェム゛の理由が分かったときには、謎が解明するときの清々しさと同時に、それに倍する苦々しさに襲われる。
トマス・H・クックのウィキペディアで示されているリストにある、゛The Quest for Anna Klein゛も早く邦訳されますように。
傑作。
ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 17-1)
- 作者: トマス H.クック,村松潔
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/08/05
- メディア: 文庫
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キャサリン・カーの終わりなき旅 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
- 作者: トマス・H.クック,Thomas H. Cook,駒月雅子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/02
- メディア: 単行本
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