ふるえる愛の灯火に/リサ・クレイパス
リサ・クレイパス初期の初期作品。アメリカの南北戦争もの(より正確に言えばその終戦三年後)で、訳者のあとがきにもあるよう、この国、この時代の設定のヒストリカルロマンスとしては珍しく、南部ではなく北部を舞台にしている。
初々しさよりぎこちなさが見える初期作品で、ことにヒーローの性格設定にむらがある。決まりきった言動しかしないヒロインの婚約者と対比するよう、複雑かつ衝動的に描いたのかもしれないが、どうもなにをしたかったのかよく分からない登場人物になっている。南北戦争直後に南部の人間が北部に行き、地元の人間に喧嘩を売るようなことを言えばトラブルになるのは火を見るより明らかなのに、なぜそれをしてしまうのか。
婚約者もいる北部令嬢と、南部の元従軍記者のロマンス。リサ・クレイパスの熱心なファンにはお勧め。