FAIRY TALE

ハンドルネームは八尾の猫です。耽美と翻訳ミステリが大好きです。旧ブログはhttp://d.hatena.ne.jp/hachibinoneko/、メールアドレスはaae22500@pop21.odn.ne.jpです。

静かな水のなかで/ ヴィヴェカ・ステン

静かな水のなかで 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

静かな水のなかで 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

 スウェーデンで大人気のシリーズ第一作。
 すでにテレビドラマとして映像化されているという話だが、確かにとてもドラマ化しやすいタイプの作品だ。好感度の高い主人公達(しかも家庭の中でトラブルあり)、風光明媚の舞台、陰惨過ぎない殺人事件、そして主人公達の危機がもたらすスリルと、楽しめる犯人当て。
 ちなみにこれは決して、作者と作品を貶めようとしての言葉ではない。私を含めて、一定の読者を確実に愛されるタイプのミステリだ。
 おかしな例えかもしれないが、アガサ・クリスティーやポーラ・ゴズリングの諸作品から、コージーの要素を薄めて、もう少し堅苦しくし、警察小説寄りにしたら、この『静かな水のなかで』のような作品になるのだろう。
 恋愛関係ではなく、友人関係である男女の幼馴染コンビ、警察官の男性と、法律家の女性が主人公だが、今回は警察官トーマスのその同僚達の活躍が目立つ。
 リゾート・アイランドで見つかった死体。長い間水に漬かっていたおかげで無残な様子となっていたが、身元は分かった。一度は事故かと思われたが、直後に被害者の親族もまた奇妙な死を遂げたことで、事件は一気に連続殺人事件の様相を見せ始めた。
 あまりにこなれ過ぎていて、いま一つ新鮮味に欠けるのが欠点と言えば欠点だろう。2014年1月にはシリーズ第二作『閉ざされた環のなかで』が、2014年3月にはシリーズ第三作が早川書房から出版されるとのこと。楽しみである。